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2007年10月30日

会計事務所 製販分離への挑戦 -2-

24日の第1回目で、会計事務所が取組むべき経営スタンスとして、「製販分離」の概念を紹介しました。今回は「製販分離」の重要ポイントと言える"製造工程"を構築するためのステップを解説します。

 実際に現場改善を支援している会計事務所について、ひとりの担当者が1日、1週間、1カ月の時間をどのように活用しているのかを分析してみると、多くの事務所では<記帳入力を行なう><試算表を作成する><決算を組む><申告書をチェックする>などの"製造工程"に多大の時間を投入していることがわかります。

 最近では、すべての工程をひとりの担当者が実施するのではなく、入力や簡単なチェックは契約社員に仕事を任せる会計事務所もあります。だが、それでもなお、かなりの時間を費やして毎日毎日製造作業を行っているのは事実です。

 しかも、こうした製造作業を入所3年目の方も30年目の方も同様に背負っています。また、ひとりで月次担当を40社や50社も抱えて作業をするのは不可能であり、結果として、目の前の製造作業を終わらせるために深夜残業の日々が続くというのが大きな課題となっています。明らかに非効率的といえます。これが、まさに"ひとり担当制"の限界です。そこで、製販分離が重要となってきます。すなわち、製造を担当する"工場"があれば、会計事務所の効率性は格段に上がるわけです。

製販分離を進めるベストな手順とは

ステップ1としては、まずは現顧問先の記帳業務(元帳、試算表作成)の工場化を実現させたい。次にステップ2として、既存の顧問先の申告業務を工場化させる。最後にステップ3として、新規顧問先の記帳や申告を受けられる工場作りを目指していただきたい。

製販分離がうまくいかない事務所を見ると、上記3段階のステップを順序に沿って進めていない傾向があります。順序通りに計画的な工場作りを目指して欲しい(ただし、事務所の状況によっては、ステップ3から進める場合もあり)。

いずれにしても、要求や製造工程の異なる3ステップを同時期に構築すると、現場に多大の負担が掛かってパンクしてしまうのでご注意下さい。製販分離の重要性を認識していても、会計事務所内にそれを根付かせることができないケースも多いです。だが、あせらず実践することが大事です。

次に、製販分離を進める上で重要なのは、事務所としてのさまざまなルールを決めておくことである。たとえば、「生産性」と「品質」の境目をどこに設置するかを定める。というのも、品質を最大限に向上させるためには、極端に言えば、有資格者が100回チェックすれば良いはずだが、そうすると生産性は落ちます。また、生産性を向上させるために必要な工程を省けば、エラーが続発して品質低下を招きます。境目を設置することで、製販分離が非常に効果を発揮します。

ほかにも、工場長(チーフ)の役割や責任・権限は何か、サービス・販売担当が入手した情報をどのように所内でデータベース化するかなど、製造工場を構築する上で必要な組織ルールを構築して、公開および実践して、見直しを継続的に行うことが重要となります。

自分でなければできないその考えが大きな誤解

こうした製販分離化の支援をしていると、実は、一番労力が掛かるのが現場の抵抗だったりもします。長年にわたって担当してきた顧問先の処理や製造は、自身でなければ絶対に対応できないという「妄想」が組織改革を遅らせることになる。「自分でなければできないという考えは妄想!」と言い聞かせることが肝要だ。処理に必要な情報や手順を公開すれば、会計規則や税法、商法など一定のルールのもとで製造するのだから、自分でなくとも必ずできます。製販分離、組織化を進めるに当たっては、まずこの点をクリアしておきたいです。

しかし、現場の抵抗も理解できます。長年実施してきた作業(「業務」ではないことに留意!)が、いきなり明日から自身の手を離れてしまえば、何をしたら良いのか分からなくなってしまうという不安があるからです。これについては次回で解説します。

製造工場としての機能を実現できた際に検討すべき事項は、"外注工場"の活用だ。ある程度の処理能力を有した工場で留めるのか、さらに大きな処理能力を有する工場へと拡大していくのか、それは経営者の考え方次第だが、長期にわたるバブル不況の経験を活かすなら、これからの工場は一定のパイを確保して処理能力以上になった場合には、外部の工場を活用して処理能力を補完する方法を取った方が良いでしょう。

たとえば、一時に大量の処理をしなければならない個人の確定申告作業や年末調整業務。また、一定の要件以下(全く起票が顧問先側でできないなど)については外部の工場を活用するなど。自社の経験だけでなく、「外部の目と知恵」を入れ込んでルール構築や工程作りをした方が"早く""安く""確実に"実現できるはずです。

イプシロン
posted by イプシロン at 07:18 | 会計事務所製販分離への挑戦 | 更新情報をチェックする