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2007年10月24日

会計事務所 製販分離への挑戦 -1-

 一般企業であれば、それぞれの業務ごとに担当部署が設けられているが、会計事務所の場合、ひとりの職員が顧問先に対するすべての作業を担当してしまうことが多い。このような状況では、事務所経営にも限界が生じてくる。そこで、会計事務所の新しい業務スタイルとなり得る「製版分離」について解説する。

 弊社は長年、北海道から九州までの士業(主に公認会計士や税理士、社会保険労務士、行政書士)を中心とした事務所の経営改善の支援を実施している。各士業とも、ここ数年で士業法の改正や社会インフラの変化、お客様要求の多様化、IT進化など、事務所経営を取巻く環境が急激に変化している。

これだけ時代が変化して、お客様の要求が変化しているものの、多くの事務所では10年前、20年前と同じサービスを製造し、提供し続けている。企業が生き残るための重要なキーワードのひとつに、【変化への対応】を挙げることに異論は少ないと思うが、いざ自身の経営ということになると、なかなか改善しきれていないのが現実のようだ。

そこで、全国での支援事例を踏まえ、いま日本中の士業事務所で起きている「組織化実現への活動」「現場での製販分離の活動」について事例を交えながら解説を行い、事務所経営改善に活かしていただける情報提供を行いたいと思う。

"職人制方式""担当制"が障害に
さて、さまざまな変化を妨げる要素のなかで、とくに生産性向上を阻害し、かつ新サービスや新分野進出を阻む要因となっているのが、士業事務所における"職人制方式"(家内制手工業)と"担当制"だ。多くの事務所では、1担当先に対して、試算表や決算・申告書の作成という「製造機能」と、実際に顧問先に訪問して税務・会計指導を行い、また経営者の悩みを共有し改善のための助言を行う「サービス・販売機能」をひとりの人間が対応している。

この方式は、幅広い専門知識分野を研究し、長年に渡って担当する顧問先へ提供するので、「税務会計のプロフェッショナル化」と「顧問先との信頼構築」を実現できるというメリットがある。しかしながら、資料の収集、チェック、製造、搬送、説明、クレーム処理までひとりでこなすため、自ずと対応できる絶対量が決まってしまうデメリットもある。つまり、どこかの時点で品質と生産性の限界がやってくるわけだ。

過去の一時期のように、常に国全体や地域全体の生産性が向上し続ける時代では、人数を多くすることによるスケールメリットによりこのデメリットを克服し、経営状態を維持していくことが可能だった。しかし、都市と地方の地域間格差が増大し、ITなどのツールが目覚しい進歩を遂げ、社会インフラを根底から変えてしまうような現状では、成長がほぼ停止し、その"メリット"よりも"デメリット"の負担が大きく圧し掛かってきている。単刀直入に言えば、ひとり辺りの生産性がほぼ頭打ちになり、かつ顧問先からの要求事項が多様化し、「担当者の眠る暇もなくなってしまった!」というのが日本中の士業事務所経営者の悩みなのだ。

この課題に立ち向かうべく、多くの先生は"製造する"という工程と"サービス・販売する"という工程を経営機能の中で分離させ、それぞれの機能の課題をクリアしていくという活動を始めている。

事務所所長は組織の「経営者」
"製造する"という工程では"徹底した効率の追求と業務品質の向上"をテーマとし、"サービス・販売する"という工程では"付加価値と効果の高い業務の提供"をテーマとして改善。そして、これらの改善を未来永劫継続していくためにも、【自社の組織化】を成し遂げることが必要だ。先生または所長という個人の立場から、"企業(組織)の経営者"へ……。担当を20社も30社も抱えた形式だけのプレイングマネージャー課長から、部下を数名抱え全体で100社、200社を管理する"管理職"へと大きく舵を取っていくことが士業事務所生き残りの方策なのだ。また、日々要求される顧問先での経営課題の抽出も、経営企画室や営業企画室を設置して、常に顧問先の要求変化や自事務所の満足度動向などを監視する必要がある。

"製販分離"を成し遂げて、組織化経営が実現できた士業事務所では、業務効率性向上と品質向上の追求により"正しい月次、決算を早く、安く"提供でき、かつ顧問先経営者が満足できるアドバイスを"タイミングを逃さず商品化された状態で、付加価値を高めて"提供できるようになる。

ヒトは多くの場合、今まで自分自身がやってきたことを見直し改善して、新たな方策を構築する動きについて前向きではない。しかし、いよいよ後向きなことを言っていられない時代になってしまったといえる。自身の生活向上実現のためには組織の向上、組織の向上のためには顧問先満足度の向上が必要不可欠。各担当者がバラバラに努力をするのではなく、組織として顧問先社長の満足度向上に取り組むべき時期がやってきたのだ。

イプシロン
posted by イプシロン at 08:39 | 会計事務所製販分離への挑戦 | 更新情報をチェックする